【何かがちょっとだけ惜しい……、独身エリートおじさんの丸の内哀歌】
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【主人公】
東京都出身の44歳。慶應義塾大学卒(在学中に米国へ留学)。
卒業後、外資系金融企業に就職。香港、シンガポール駐在を経て
2年前に帰国。昨日から独身となり同時期に日系証券会社に転職。
転職歴は計3回。田町のタワマンに在住。
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日本屈指のビジネス街、丸の内。そこで働くサラリーマンは無論ハイスペック。しかし、丸の内のエリート=人生勝ち組っていうのは一概には言えない。 .
例えば、3度の転職に結婚生活の終わり、それでもエリート然として働いている、そんなおじさんもこの街には多いという。 .
港区おじさんと比べて、出自は明確。 
キャリアに自信があるから、話の中での「俺含有率」はかなり高め。話は間違ってはいないが、ものすごく面白いことは滅多に無いという。 .
今回は、そんな丸の内おじさんが主人公
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独りメシが苦手だから部下を誘うこともある。ミスをした新入りと『TAMA』で飲む。あんまり教えてやれることはないけど、陽気に飲んで奢ることはできる。 .
追加で「ジャージャー麺」を頼んだところ、かねてから気になっている丸の内OLから着信。「今から新丸ビルで飲みませんか?」だって。。 .
【お気に入りの丸の内OLから飲みのお誘い。進展はあるか?】
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料理は部下に任せて即移動。あれ、ひとりかと思ったら友達もいる。 「前の奥さんとダメになっちゃった理由は?」
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でた、バツイチ男が避けられない質問。 .
「香港とシンガポールから日本に帰ってきたら、逆に奥さんと価値観が合わなくなっちゃって」 .
さり気に元外資の駐在経験を差し込む。 .
「そうそう、この『酢重ダイニング』って、シンガポールにも店があってよく行ったんだ」 .
旨い和食を欲している時にはちょうどよかった。 .
「俺は元外資で元奥さんがCAだったから」 .
彼女とはそんな話で盛り上がったけれど、次の約束はとりつけられずに3週間が経つ。 .
独身になると外食が増えたせいか出費が増えた。しかしいつでも気風だけはよくいたい。今晩の『文史郎』での部下との飲みも全部払った。 .
みんなで楽しい時間だったからいいんだ。ただ22時と早めに終わってまだ飲みたりない。そんな時、自然と足が向くのが『ロイヤル バー』。
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夜深めのマティーニが、おじさんの身体に染みる
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バーに入るとなじみのバーテンダーさんが品のいい笑顔で当たり前のように出迎えてくれた。バーっていい存在。話は聞いてくれるし、スケジュールも合わせなくていいし、携帯見てても怒られない。そして独りにしない。 .
マティーニを飲みながら、例の丸の内OLにLINEをしてみようかと考え、最後のやりとりを開けてみた。 .
〝ブロッコリーって何分茹でたらちょうどいい?〟 .
ジムに行ったあと珍しく自炊を思いたった日。既読のまま返事はない。 .
「ねえ、ブロッコリーって何分茹でるもの?」 .
目の前にいたバーテンダーさんに聞いた。 .
「硬めが好きなら2分くらいじゃないでしょうか」
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話をしてるとマティーニの味に丸みが出てきた。あの冷たいひと口めをもう一度味わいたくなった。気づけばオリーブのピンを3本扇形に並べていた。 .
「『アパートの鍵貸します』みたいですね」 .
そのピンにバーテンダーさんが気づいてくれた。 .
「わかる? あのシーン好きなんだ」 .
部屋を愛人との密会用に時間貸しする主人公がマティーニを飲みながら待ちぼうけしてカウンターにピンを並べるシーンがある。 .
「はい、夜が深い感じが出ていますよね。ところでもう24時で、今日は閉店に……」 .
あと9時間もしたらまた丸の内を闊歩して出社。朝のピリっとしたあの街の空気感、実はマティーニと同じくらい好きなんだ。
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