ボイスドラマ「C’est la vie〜セラヴィ」
卒業という節目に、それぞれの人生に迷う3人の女子大生。三重県・美杉の「三多気の桜」を舞台に、彼女たちは“自分の人生”を選び取る・・・
【ペルソナ】※ベースのモノローグは茉白
▪️茉白(ましろ)= 埼玉県 熊谷市周辺
「北関東在住の人気インフルエンサー=埼玉県公式アンバサダー=インスタグラマー」。本名は「真璃(まり)」。名古屋に住むVtuberのオルカ(本名は双葉)と恋愛中(ジェンダーレス)。ツアーにも観光バスをチャーターして2.5次元でオルカを参加させるはずだった
都会(東京)への憧れとコンプレックスが入り混じる絶妙な距離感。「彩北のカフェ巡り」でバズったけど、卒業後は東京のインフルエンサー事務所に入るか、地元に残るか、あるいは彼女の住む名古屋へ行くか、で悩んでいる
▪️愛真(えま)= 石川県 輪島市(災害地近辺)
歴史ある神社が数多くあり、「神道を学ぶ正統派の巫女」
金沢に住む10歳年上の彼・ハルトと付き合っている。ハルトからは卒業したら一緒に暮らそうと言われて悩んでいる。地震のあと、自分の中で何かが変わりつつあった
▪️彩羽(いろは)= 兵庫県 西宮市・芦屋市周辺(阪神間)
証券会社への内定が決まっている「お嬢様感」や「上昇志向」のある芦屋出身
就職が決まった昨年秋、子どもの頃からの夢だった声優になることを諦めるため、とある声優オーディションを受けたところ、なんとグランプリに選ばれる。以来夢をとるか現実をとるかで悩んでいる。それが理由で1歳年下、大学3年生の彼・碧とは喧嘩が絶えない
【プロローグ:パリ/セーヌ川】
◾️SE:セーヌ川のせせらぎ
失恋した女性がセーヌ川を見ながら涙を浮かべていると・・・
彼女の寂しそうな背中に素敵な紳士が一言・・・
「セラヴィ (C’est La Vie)」
「それもまた人生」
生きていればいろいろな事があるよね 大丈夫だよ。
それが人を生きる、「人生」ってことだから・・・。
【シーン1:インフルエンサー・茉白の巻】
◾️SE:アパートの外を通る車の音(自宅)
「うっそぉ〜!?
参加者3人だけ?
私の価値って・・・こんなんなの〜」
深夜0時。
スマホのライトが真っ青になった私の顔を照らす。
画面に表示された『インフルエンサー茉白と行く卒旅”セラヴィ”』。
なんとなんと最終応募者数3人。
目標の「30名」には遠く及ばず。
残酷な数字が私の心に突き刺さった。
私の名前は『茉白』。
埼玉に住む、
フォロワー数5万弱のインフルエンサーだ。
「10万フォロワーいた頃なら、こんなツアー、1分で埋まってたのに・・・」
フォロワー数復活を願って企画した、起死回生のツアー企画。
・・・のはずだったのに・・・
行き先のホテル、美杉リゾートには、
「50人とか超えちゃっても大丈夫ですかぁ?」
なんて、小っ恥ずかしいこと聞いちゃってるし。
なのに、最小催行人数になっちゃったこと伝えたら、
「ありがとうございます!」
と、真摯にお礼を言われちゃった。
かえって恥ずかしい・・・
スクロールするタイムラインには、かつての私のような、“映え映え””キラキラ”の女子たちが、次々と流れていった。
【シーン2:茉白とオルカ/深夜のチャット】
◾️SE:スマホの操作音
『双葉、ごめんね!』
『ホントは会って謝りたかったけど』
『チャット、無理して返さなくてもいいから』
双葉というのは名古屋に住む私のパートナー。
本職はVtuberでキャラ名は『オルカ』。
ちなみに『茉白』というのも、実はハンドルネーム。
本名は『真璃』。
最初の予定では、オルカが2.5次元でツアーに参加するはずだった。
オルカの参戦をサプライズにしたのが失敗だったかなあ・・・
結局、チャーターしようとしていたバスはキャンセル。
急遽、レンタカーを手配した。
人気爆上がり中のオルカは、最近私と会うどころか
チャットで話す時間さえない。
去年の終わりには、卒業後の進路について何度も話し合ったのに。
『名古屋で一緒に暮らさない?』って言われたとき、
私、ちゃんと返事できなかった。
ずうっとうやむやにして、ごまかしたままだ。
ツアー募集の締切。
午前0時をまわったとき、オルカはライブ配信中。
で、最終的なツアー参加人数は、私を入れて3人。あ〜あ・・
配信画面の右隅。猛烈な勢いで流れていくチャットの奔流。
『オルカ最高!』『今日もかわいい!』
止まることのない賞賛の嵐。
同接数(どうせつすう)は私のフォロワーを軽々と追い抜いていく。
私は冷静にDMの続きを書く。
『ツアーは、中止』
『2.5次元の参加も、なしでオッケー』
『配信、頑張って』
画面を見ながら5分間、悩んで悩んで、ようやく送信した。
【シーン3:輪島の巫女・愛真の巻】
◾️SE:名古屋駅/金時計下の環境音
「着いたぁ〜、名古屋だ」
『しらさぎ』で3時間かあ。
やっぱ北陸って遠いんだな。
私の名前は愛真。
輪島で、代々続く神社の娘。
巫女〜舞姫をしながら金沢の大学へ通っている。
能登半島・輪島。
2024年1月1日 16時10分。
あの日から、私の世界は大きく変わった。
傾いた鳥居、亀裂の入った参道。
私は『巫女』として、避難所を回り、
炊き出しをして被災者を励ましてきた。
そんな私を支えてくれたのが、10歳年上の彼・ハルト。金沢市内で設計コンサルタント会社を経営している。
実は1週間前、ハルトから
『卒業したら金沢で一緒に暮らそう』
と言われた。
プロポーズの言葉。
『君を幸せにしたい』
『君は僕の、心の拠り所なんだ』『僕も、君がいれば幸せになれる』
嬉しいけど、悩ましい。
復興はまだ道半ば。
結論を出せないまま、私はツアーに申し込んだ。
気分転換、かな。
名古屋駅の駅舎。
空気が乾燥して、ちょっぴり喉が痛い。
輪島の、少し湿った潮の香りはどこにもない。
東口にある金時計・・・
ってここよね?
参加者、いるのかなあ・・
『インフルエンサー茉白と行く卒旅”セラヴィ”』。
ちょうど卒旅探してたし、
茉白にも会いたかったから
つい参加しちゃったけど・・
集合場所は、名古屋駅の金時計、だよね・・
ってほら、DMにも書いてあるし。
何人くらい参加するんだろ。
茉白のフォロワーだからきっと100人くらいはいるだろうなあ。
きっと、全国いろんなところから集まってくるでしょ。
「愛真・・・さん?」
「あ・・・」
「こんにちは、茉白です」
「茉白さん!」
「ツアー参加、ありがとうございます」
「こちらこそ!
お会いできて嬉しいです」
「全員揃うまで
ちょっとだけ待ってくれる?」
「はい。ほかの参加者は?」
「あとひとりよ」
「え・・」
「愛真さんと私と、もうひとり、彩羽さん・・・
西宮からって言ってたから、すぐに到着するでしょ」
あとひとり・・・って・・
茉白さん入れて、3人ってこと?
なにかトラブルでもあったのかなあ・・
【シーン4:芦屋の声優希望・彩羽の巻】
◾️SE:新幹線の車内音
「もう、ほんまにしつこいっ! 切るよ!」
あ〜、言っちゃった・・・
だって、碧(アオ)ったら、卒旅直前まで電話してくるんだもん。
私の名前は彩羽。
芦屋から神戸の大学へ通っている。
碧は去年から付き合っている彼氏。
同じ大学の3年生。
そ、一個下。
私は卒業後、パパの紹介で外資系M&Aコンサルへ内定。
のはずなんやけど・・・
実は・・子どもの頃から”声優”になりたかったんだ。
パパやママに話したら、一蹴されちゃって・・
それ以来一度もその話はしていない。
ところが・・・
去年偶然見つけたアニメの声優発掘オーディション。
応募したら一次審査通過。
イベント会場でおこなわれたニ次審査では、グランプリとっちゃったんだ。
確かに、小さい頃から朗読が大好きで、
ボランティアで読み聞かせをしたりしてたけど・・・
養成所に通ったり、レッスン受けてたりしてないから
もうびっくり。
だ・け・ど・・・碧は大反対。
”声優なんてアイドルと一緒やで”
”チャラチャラしててイヤやな”
なんちゅう先入観。
今回のツアー行くって言ったときも
”茉白って誰や”
”聞いたことないで”
”美杉ってどこ”
”携帯の電波入るんか”
ってもう、こんな感じ。
言わんときゃよかった。
碧はとにかく甘えん坊で、私のことが大好きすぎて・・・
でもうざい。
ただでさえ、この先どうしたらいいか頭痛いのに。
まともに相談さえできへん。
◾️SE:新幹線の車内アナウンス『まもなく名古屋、名古屋です』(録音済)
◾️SE:名古屋駅構内の雑踏
金時計、金時計・・・と・・どこやろ?
あ、あれか?
あの趣味悪・・・ゴージャスでイケテるモニュメント。
あ、もう、茉白さん来てはる。
「こんにちは、茉白です」
「彩羽です!お待たせしました」
「よろしくね。
あ、こちら、輪島の愛真さん」
「こんにちは」
「はじめまして。
あれ?ほかの人は?」
「ツアーの参加者は私たち3人よ」
え・・・うそ。
ひょっとして・・・選抜ってこと?
私、選ばれた人なん?
「さ、行きましょ。
駐車場へ。
ここからは車よ。
運転は、私がするから!」
※続きは音声でお楽しみください。